本書の概要
1986年に刊行が始まった「情報サービス産業白書」は、企業情報システムの開発を請け負う情報サービス企業に、最新のテーマに基づいた提言を行ってきた。その最新版である「情報サービス産業白書 2025」では、生成AIをはじめとする新しいテクノロジーに取り組むことによって生まれた課題を明らかにし、その課題を解決するために情報サービス企業ができること、やるべきことは何かを提示する。
本書のポイント
- ユーザー企業と情報サービス企業にアンケートを実施
- 生成AIに対する企業の取り組みを詳細に分析
- 特定テーマ(生成AI、データプラットフォーム、アーキテクチャ政策、セキュリティ、デジタル人材)を大手IT企業に所属する識者が解説
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注目の調査結果
生成AIを活用している、または活用を検討しているユーザー企業に対し、課題として捉えているものとそのうち外部事業者と連携することによって解決を期待するものを質問した。生成AIの活用において生じうる課題は、組織体制、人材、投資、知見・ノウハウ、導入プロセスの5つの観点から25項目を設定した。ユーザー企業が課題として捉えているものは、「導入を担当する社内体制が不足している」「運用・管理を担当する社内体制が不足している」「社内部署間の連携体制が不足している」の順に高く、社内の組織体制に関して課題を抱えている企業が多いことがわかった。

課題ごとの、外部事業者と連携することによって解決を期待する企業の比率をみると、導入や運用・管理体制の不足に加えて、「社員のスキル向上・研修の機会が十分ではない」「中途採用の難易度が高く、人材確保が難しい」「新しいテクノロジーの知見・ノウハウを取り入れる仕組みがない」といった課題は、外部事業者との連携による解決を期待する企業の比率が半数を超えていた。一方、「社内部署間や社外との連携体制が不足している」「新規採用の難易度が高く、人材確保が難しい」「知見・ノウハウの社内共有がうまく行われていない」といった課題を抱えている企業数が外部事業者に対して解決を期待する比率は50%未満となった。
前表の「課題として捉えている割合」と「外部事業者との連携による解決を期待する比率」の結果から、生成AIの活用におけるユーザー企業の課題を4つのセグメントに分類した。「課題として捉えている割合」は全ての課題の平均値(21.2%)を閾値(しきいきち)とし、「外部事業者との連携による解決を期待する比率」は半数以上の企業が期待しているかという観点から50%を閾値として設定した。

右上の領域では、多くの企業が課題と認識し、外部事業者の支援を強く求めており、課題解決のニーズが大きく、情報サービス企業にとってチャンスが大きい領域であると言える。左上の領域では、課題として認識する企業は少ないものの、認識している企業の多くは外部支援を求めている。右下の領域では、多くの企業が課題として認識しているものの、企業内での解決を優先する傾向があり、外部連携に対するハードルが高い可能性がある領域と言える。左下の領域では、企業の課題認識も低く、外部事業者への期待も少なくなっているため、現時点では情報サービス企業にとって短期的なチャンスは小さく、取り組むべき課題としての魅力は低い領域であると言える。
本書の内容
本書の第1部では、新しいテクノロジーの導入によってどのような課題が生まれているのか、IT技術をユーザー企業に提供してきた情報サービス企業は、新しいテクノロジー導入のパートナーとしてどのような役割を期待されているのか、「情報サービス企業」および「ユーザー企業」へのアンケート調査やヒアリング調査を通じて、両者の関係性を明らかにする。
目次
第1章テーマの背景と問題意識
第2章ユーザー企業と情報サービス産業の動向
第3章生成 AIの活用において情報サービス企業が果たすべき 重要な役割
第4章情報サービス産業の近未来像
第1章JISA調査・統計等で概観する情報サービス産業のトレンド
第2章情報サービス産業を取り巻く環境の動向