本書の概要
1986年に刊行が始まった「情報サービス産業白書」は、企業情報システムの開発を請け負う情報サービス企業に、最新のテーマに基づいた提言を行ってきた。その最新版である「情報サービス産業白書2026」では、深刻な人手不足が続く中、AIの普及によって求められる人材の「質と量」はどう変化するのか。ITベンダー、ユーザー企業、エンジニア個人への詳細なアンケート調査をもとに徹底分析した。
本書のポイント
- ユーザー企業と情報サービス企業、ITエンジニアにアンケートを実施
- 情報サービス産業における人材問題を深堀
- 特定テーマ(生成AI、データプラットフォーム、アーキテクチャ政策、セキュリティ、人材育成)を大手IT企業に所属する識者が解説
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注目の調査結果
AIの進展にともない、ユーザー企業が情報サービス企業に求める役割は、従来のシステム開発から「ビジネスの変革」へと大きくシフトしている。ユーザー企業へのアンケート(図表1)の回答を見ると、「自社のビジネス課題に即したAI活用方法の企画・提案」(35.8%)がもっとも多く、「AI導入によるビジネスモデル変革・高度化」も24.1%あった。対照的に「従来通りのシステム開発・保守」を期待する声は9.1%に留まっている。この結果は、ユーザー企業が単なる「発注先」ではなく、ビジネスを共に創出する「共創パートナー」としての役割を情報サービス企業に強く期待していることを示唆している。
今後必要とされるスキルについては、上流工程やセキュリティ設計、ヒューマンスキルの重要性が高まる一方、プログラミングや保守運用の重要性は低下すると予測されている。ここで懸念されるのが「人材育成のジレンマ」だ。AIが生成したコードの品質をレビューする能力は、本来、自らの泥臭いプログラミング経験を通じて培われるもの。しかし、その実践機会がAIに代替されてしまうことで、将来的には「AIの出力を的確に評価・統制できる人材が育たなくなる」という深刻なリスクが指摘されている。
さらに、ITエンジニア側で「AI倫理や法規制、セキュリティ等のルール整備・開発運用プロセスを統制するスキル」への重要性認識が非常に高まっているのに対し、AIによる情報漏洩や不適切な出力を防ぐ安全策である「AIガードレール」の企業側の整備状況は36.1%に留まり、過半数(52.5%)が未対策であるというギャップも明らかになった(図表2)。AI活用の急拡大にともない、ガバナンス体制の構築とそれを担う人材の育成が、今まさに大きな論点となっている。
本書の内容
本書の第1部では、「AI時代における情報サービス産業の人材問題を考える」をメインテーマに据え、情報サービス企業、ユーザー企業、そして最前線で働くITエンジニア個人という3者への詳細なアンケート調査をもとに、AIの普及が今後の人材需給にどのような影響を与えるのか、そして不確実性の高い状況下で企業はいかに行動すべきかを分析した。第2部では、情報サービス産業の最新トレンドや個別技術の動向、統計データから見える現状を多角的な視点で解説。データ編では、情報サービス企業、ユーザー企業、ITエンジニアに実施したアンケート調査の詳細な集計結果を網羅している。
目次
第1章 テーマの背景と問題意識
第2章 情報サービス産業/ユーザー企業/ITエンジニアの動向
第3章 AI普及がもたらす認識ギャップと求められる人材の変化
第4章 AI時代の情報サービス産業:自己変革と人材への取組
第1章 JISA委員会レポート等で概観する情報サービス産業のトレンド
第2章 個別技術動向
第1章 情報サービス産業動向調査(情報サービス企業アンケート調査)
第2章 ユーザー企業アンケート調査
第3章 技術者個人(ITエンジニア)アンケート調査